売春の自由党→ UNIDOS → SWASH の歴史(その3・第三版)

従軍慰安婦問題と日本のフェミニズム/日陰者でありたい権威の「トラブル」
日本のこどもを SWASH から守ろう 2023.03.25
誰でも

1.要約

2.売春擁護から買春擁護へ

ここまでは(その1)をお読みください。

3.宮台真司は児童売買春を奨励していない

ここは(その2)をお読みください。

4.従軍慰安婦問題との関係

5.なぜ LGBTQA なのか?:20世紀へのノスタルジー

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4.従軍慰安婦問題との関係

欧米では LGBT 問題は 80年代の HIV ウィルス感染拡大の際に、主に男性の同性愛者(G=ゲイ)がいわれなき差別を受けたことへの異議申し立てから本格化していったと考えられます。これに対して日本では、満洲国建国から第二次世界大戦終了までに、日本軍により組織的に強制売春をさせられた、旧植民地の女性が日本政府に損害賠償を求めた訴訟、および犠牲者の聞き取りがフェミニズムの転換点となりました。いわゆる「従軍慰安婦」問題です。

2022年度末まで東京都から若年女性支援事業を受託していた4団体のうち、Colabo、ぱっぷす、若草プロジェクトは、元々1991年から日本政府に謝罪と賠償を求めた訴訟(いずれも却下)に学び、日本政府の立場に批判を加え続けていました。後に加わる Spring も犠牲者の聞き取り調査を行っています。

これに対し売春の自由党と UNIDOS はかつての従軍慰安婦が、日本軍撤退後も本国で不当に非難され迫害されてきたことを問題視し、売買春の合法化により、女性を含めた世間が彼女たちを差別しない倫理規範を整えようと、法整備を訴えました。

佐藤悟史はセカンド・レイプという言葉の中に、従軍慰安婦への差別感情があり、取り分け左派のフェミニストに顕著に見られると分析します。そこに売春防止法議決時以来変わらない、偏見と無関心、そしてダブル・スタンダードを見いだし、嫌悪感をあらわにします(「座談 性風俗と売買春」。松沢、スタジオ・ポット:268)。

ここで改めて「Colabo と仁藤夢乃さんを支える会」の名簿(https://colabo-official.net/wp-content/uploads/2022/12/deeefe4c1823f3b63f9afa0e0acbf931.pdf 2023年3月23日閲覧)を御覧ください。韓国の女性団体が多く名を連ねています

Colabo 始め東京都から支援事業を受託していた団体は、2018年から厚生労働省が設置した諮問機関「困難な問題を抱える女性への支援に係る基本方針等に関する有識者会議」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28829.html, 2023年3月24日閲覧)のメンバーとして名を連ねていました。2021年11月7日の第1回会議の参加者と議事録から確認できます(https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/001029580.pdf, 2023年3月24日閲覧)。SWASH の構成員は明らかにされていないため、メンバーに入っているか確認できません。

この取り組みが安倍晋三政権下で始まったことは、意外かも知れませんが事実です。当事者の女性からすれば、普通のことがやっと実現しただけに見えるかも知れませんが、こと韓国に対しては差別を剝き出しにしていた安倍晋三支持者(安倍本人がどうだったか、私には分からないので、こう書きます)朝鮮従軍慰安婦損害賠償訴訟で政府を非難していた団体を諮問機関のメンバーに加えていたのです。その結果、Colabo のバスカフェは東京都からの受託で活動を始めました

いかがでしょう。(その1)で目次を掲載しましたが、ここまで読んで肩透かしを喰らった感覚に陥る方は、おいでではありませんか。

私個人は安倍政権を支持しません。しかし、非正規社員の無期雇用転換義務法制化など、安倍政権の打った施策には、弱者救済のプログラムもあったことは、高く評価します。民主党・国民新党政権よりも踏み込んだ法制化も実現して今日に至ります。

政治は細かく、丁寧に見ていかなくてはなりません。

反安倍政権のみなさんは次のようなイメージを持っておられるのではないでしょうか。

1990年代バブル崩壊以降、小林よしのり始め嫌韓流がブームになり、「新しい教科書を作る会」の歴史修正が始まり、ネトウヨの温床となった。小泉政権下で首相の靖国神社参拝が強行され、その流れが親米反中・韓右翼勢力をポップに拡張していき、テレビ番組「たかじんのそこまで言って委員会」や石原慎太郎都政下で、差別がメディアを通じて喧伝された。一方で川崎を発信地としてヘイト・スピーチが過激化し、それを防止する法案を民主党・国民新党政権下で勝ち取った。しかし3.11を契機にネトウヨが排外主義を SNS で拡散し、差別的で国民を搾取し、大企業と米国におもねる安倍政権が栄華を極めた……

答えは書きません。どこが間違っているか、皆さん御自身で確認なさってください。上に掲げた段落の誤りを見抜くメディア・リテラシーがなければ、まんまと SWASH に日本のこどもの未来を委ねることに賛成してしまいかねません

話を有識者会議に戻しましょう。この会議はまだ続いており、今年2023年1月16日に第5回会議が行われました(議事録は3月7日に公開。https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/001067471.pdf, 2023年3月24日閲覧)。会議参加メンバーが減っており厚労省レベルで東京都若年女性支援事業を補助事業に転換する提言が行われていると分かります。(NPO 法人全国女性シェルターネット理事、近藤恵子氏の意見書:https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/001037830.pdf, 2023年3月24日閲覧、婦人相談所長全国連絡会議所長、高岸聡子氏の意見書:https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/001037831.pdf, 2023年3月24日閲覧)。(2023年4月3日追記:2023年3月29日に、2023年度以降の厚生労働省の方針に関する重要な資料が公開されました。別途ニュースレターで分析します。https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32287.html, 2023年4月3日閲覧。)

意見書を出している2つの団体は、外郭団体、すなわち官僚の天下り団体の様相を呈しています。両者からは、主にDVシェルターの件を、地方自治体ごとに権限を委譲し、画一的義務を課さないようにする目的が読み取れます。

婦人相談所長全国連絡会議は売春防止法を契機に、当初は管理売春根絶を目的に立ち上がったので(https://zenfusou.jp/27963212052086923481.html, 2023年3月24日閲覧)、売春の自由党、UNIDOS、SWASH にとって不倶戴天の敵のはずです。それが皮肉にも3団体が同様に敵視してきた Colabo, ぱっぷすの2団体の活動のハシゴを外す効果を生んでいます。なお、Spring を挙げなかったのは代表理事が分からないからですが、若草プロジェクト理事、村木太郎は出席しています。(太字部分は裏が取れたため、第三版で修正しました。)

以上の流れから推すに、東京都から若年女性支援事業を受託していた一般社団法人は、補助事業に転換後、若草プロジェクト1つになる可能性が想定されます。そこに SWASH と連携する一般社団法人が食い込んでいき、従軍慰安婦問題への国の対応を批判していた諸団体の代表は、若草プロジェクトに統合されることの布石だ、と見るのは、陰謀史観だと謗りを受けるでしょう。そのような結末を望みます。

さて、売春の自由党、UNIDOS、SWASH は韓国との連帯より、台湾の従軍慰安婦、ひいては性搾取産業の女性達と連帯を強めて対抗していました(松沢編「SWASH の活動 1999〜2014」https://swashweb.net/wp-content/uploads/2023/02/ABOUT_SWASH-1.pdf , 2023年3月23日閲覧)。韓国では売買春に関する法整備がここ10年で進んで来ています。女性の権利も法的に少しずつ保障されてきました。台湾が立ち後れていると断ずるのは早計ですが、買春合法化を目標とする SWASH にとって、台湾とつながりを持つのは好都合だったでしょう。

かなり単純な図式化を行いました。私が現在持っている情報では、ここまでしか分かりません。ただ、次回から詳しく採り上げる清水晶子が SWASH に参加したことで、韓国との連携も始まっていることは強調しておかなくてはなりません。

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5.なぜLGBTQA なのか?:20世紀へのノスタルジー

LGBT の法制化がここ数年で急激に進んだ欧米諸国と異なり、日本の女性が社会的弱者である状況は、様々な法制化や部局の設置にも関わらず、遅々として進んでいません。近年スキャンダルとなった、医大入試の女性差別選考基準を例に挙げれば充分です。まず女性の権利を保障し、それが行き渡った倫理基盤を、社会の文化資本として定着させることが急務です。

欧米諸国において、まずある程度の男女平等が確立し、その上で性自認が政治課題となっているのですから、日本にそのまま導入すると、医学的には小松美彦が主張した「アメリカナイズ」の暴力を避けられないでしょう。

もちろんトランスジェンダーの疎外は望ましくありません。それをなくすには、まずトランスジェンダーとは何か、国民の了解と認知を広めることが不可欠です。それがあまりにも進まないから、男女差別を温存したまま性自認を認める法制化が進んでしまうと、田中智彦の言う「民主主義的野蛮」により、女性というセクシャリティが蹂躙され、搾取されることを加速させかねません。つまりトランスジェンダーの権利のために、女性の権利が低められることは、決して許されないのです。

従って1990年代から状況が変わらないと業を煮やして、トランスジェンダーの集団が女性を攻撃することは、テロリズムに他なりません性自認反対派をネオナチ呼ばわりする前に、もっと対話のチャンネルを開いてください。私自身、異性愛者で男性の日本人として、お願いします。特にトランス男性の声が聞こえてきません。

さて(その1)で触れた SWASH 編『セックスワーク・スタディーズ』では LGBTQA という言葉が用いられていますが、皆さん説明できますか。私にはできません。L=lesbian(同性愛の女性)、G=gay(同性愛者の男性)、B=bisexual(両性愛者)、T=transgender(生物学的性別と性自認が一致しない)、Q= queer(変な性嗜好者)、A=asexual(性自認がない)。このように言葉としては訳せますが、1つおかしなものが紛れ込んでいます。Q です。変な性嗜好者とは性別ではないのではありませんか。(2023年4月3日追記:日本の一部公的機関の刊行物では Q= questioning としている旨御指摘がありましたが、結果は同じだと私は考えますので、以下の論に変更は加えません。)

これは米国の文学理論家ジュディス・バトラー(Judith Butler)が1990年に刊行した Gender Trouble: Feminism and the Subversion of Identity, (London: Routledge. 邦訳『ジェンダー・トラブル――フェミニズムとアイデンティティの攪乱』(竹村和子訳、青土社、1999年)で導入した手法で、ここ10年日本の英文学や英語文化読解で理論として、盛んに用いられていますが、私の理解で敢えて訳すなら「変態」です。人類みな性的に変態と読むと、世界の見え方が変わってくる。これでクィア理論の説明は終わります。

こんなもの理論ではありません。バトラーがそんな愚かな学者であるはずがありません。しかし、日本で80年代以降ジャック・デリダの脱構築が流行して、なんでも勝手に「脱臼」させていたように(『ハムレット』の台詞 “The time is out of joint.” に由来。デリダはこの表現でマルクス主義と社会主義崩壊を語っています。[Jacque Derrida, Spectres de Marx, Galilee, 1993. 邦訳『マルクスの亡霊たち』、増田一夫訳、藤原書店、2007年])、クィア理論に拠る英語圏文学、文化の学者はなんでも勝手に変態扱いして読解しています。

注意が必要なのは、今日バトラーは一般に権威として認知され、英語圏では “LGBT without T” という言葉が盛んにフェミニストによって使われ始めたことです。すなわち同性愛者、両性愛者は自分たちを LGBTQ と自認している。それがすでに定着しているわけです。(2023年4月3日追記:初稿リリース後に男性同性愛者の一部に、政治的活動家だけがゲイで、そうでない者はホモだ、という主旨の発言が議論を呼んでいますが、本稿では立ち入りません。)

この背景にはバトラーの幼少期の体験があります。米国のユダヤ人としてコミュニティに生まれ育った彼女は、幼い頃自分がレズビアンだと自認します。それを親に伝えるとコミュニティのほぼ全員に知れ渡ってしまった。今で言うアウティングを親にされてしまった。そこで彼女は居場所を求めた末に、1970年代後半から80年代前半にかけて、同性愛者のバーに安息の地を見つけたそうです。自分がレズビアンだという事実は、セクシャル・マイノリティとしてアイデンティティを確立したことで、正統性を獲得できたとのだと彼女は語ります。(Judith Butler interviewed by Jules Gleeson, “We Need to Rethink the Category of Woman,” Para. 15-16, https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2021/sep/07/judith-butler-interview-gender, accessed Mar. 24, 2023)。

[この段落は飛ばして読んでいただいても結構です。]バトラーのクィア理論に見るパフォーマティヴィティは、言語学者J.  L. オースティンの有名な理論を応用していますが、最近の文学理論学者は宮台真司と比べてはるかに不勉強なので(その理由はいずれ有料記事で書きます)、その前提すら知らないまま、ただ変態的読解さえしていれば最先端だと思っているようです。あたかもレヴィナス対デリダの論争を無視した1980年代から2000年代初頭のフランス文学者や映画学者のような論文が氾濫し困りものです。岩波文庫版の翻訳も出ているので Terry Eagleton, Literary Theory, (Anniversary ed., Minneapolis: Univ. of Minnesota Press, 2008. 邦訳テリー・イーグルトン『文学とは何か:現代批評理論への招待』、上下巻、大橋洋一訳、2014年)だけでなく、After Theory, (London: Penguin Books, 2004. 邦訳『アフター・セオリー:ポストモダニズムを超えて』、小林章夫訳、筑摩書房、2005年)くらいは頭に叩き込んで、理論の限界を前提にして考えて欲しい、三題噺みたいな論文を量産しないで欲しいとしか言いようがありません。その最低の例が、大橋洋一門下の東大出で、途中からSWASH に参加した清水晶子ですが、バトラーを悪用しているので看過できません。

他の仕事は別として、こと性についてバトラーは今もって攪乱を試みています。ここで注意したいのは、彼女が1956年生まれだということです。その言動が爆発力を持っていたのは HIV 感染で同性愛者差別が収まらない1990年代でした。その後、多くの欧米諸国では同性愛も同性婚も認められ、わざわざセクシャル・マイノリティを自認しなくても生活の支障は、こと都市部に限定すればなくなりつつある。90年代の連帯は成果を収め、同性愛と異性愛はいちいちカミングアウトしなくても、人権については獲得してきたと言えるでしょう。

それなのにバトラーはマイノリティであることにこだわり、性自認推進主義者として「リベラル」の最先端でいようとする。なくても良い「トラブル」を起こし、挙げ句の果てには、性自認に寛容すぎる傾向に疑問を投げかける人を、ファシスト呼ばわりして大騒ぎになる。しかしバトラーは変わろうとしないのです。新しい敵を見つけることに躍起になっています。

おそらく彼女の原風景は、1970年代末から80年代初頭のゲイ・バーのままなのでしょう。世界的権威と持ち上げられた今でも、彼女は日陰者を自認したいのではないでしょうか。それでは傲慢だと謗りを受けても仕方がありません今のバトラーは20世紀へのノスタルジーを、自分の挙げた成果と今の自分の立場を自覚せずにまき散らす、危険人物になってしまいました。彼女の国家論に学ぶところが大きいと思う私でも、弁護はかないません。

ジュディス・バトラーは優れた学者ですが、現在の位置は「買春の合法化に成功した宮台真司」だと書くと言い過ぎでしょうか。SWASH が今のバトラーを新たな武器として獲得したことが象徴するように、LGBTQ は「トラブル」の自動機械として永遠の魔女狩りを可能にする装置となってしまいました。

ネオナチはどちらなのでしょうか。

(了)

次のメールマガジンからは「フェミニズム界の菅義偉」こと清水晶子について回を重ねて配信します。

2023年3月25日 初版

2023年4月3日 第二版

2023年4月15日 第三版

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