東京都若年女性支援事業が補助事業に変更になった危険(第二版)

2023年3月20日付け「東京都若年被害女性等支援事業における実施方法の変更について」読解と共に
日本のこどもを SWASH から守ろう 2023.03.22
誰でも

先のメールマガジンでは Colabo と警視庁の対応が不明確ではないことを疑問ししました。ところが2023年3月20日付けで、東京都福祉保健局が「東京都若年被害女性等支援事業」を2023年度から補助事業化することを発表しました(https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/jakunenjosei/moderu.html, 2023年3月22日閲覧)。同時に Colabo に対する行政指導の内容も、仁藤夢乃が Twitter で共有する前に公開されていますhttps://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/jakunenjosei/moderu.files/henkou.pdf, 2023年3月22日閲覧)。これによって Colabo のバスカフェは2023年4月1日以降は東京都からの受託事業としては行えないことが確定しました。

今回は次の3点について明確にしていきましょう。

1.Colabo バスカフェに都が支援を行わない理由

2.支援事業と補助事業の違いと委託対象

3.一般社団法人の要件と受託の関係

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1.Colabo バスカフェに都が支援を行わない理由:危ない場所でやっているから

これはおかしいですね。そもそも新宿区役所内の立地は、何十年にもわたって危険な地域です。近くにホストクラブもあればストリップ劇場も各種風俗店もポン引きが連れて行く案内所も軒を連ねている。だったらそもそもなぜそこを提供したのか? という問題ですね。

はい。これが役人の論理です。東京都福祉保健局の立場から見れば、今回の Colabo バスカフェ襲撃は、担当者の判断ミスがもたらした「不祥事」なのです。警視庁にまで御迷惑をおかけしたとんでもない「不祥事」です。なので諸方面に頭を下げて回って、担当者を新年度の人事異動で配置換えし、制度も仕切り直します、ごめんなさい。

都民にすれば治外法権化する歌舞伎町を守って欲しいのに、役所は仲間内で揉み消したい。そこで Colabo に「大変御迷惑をおかけしました。つきましては今年度残り2回、別の場所で開催をお願いしたいので、候補地を挙げていただけないでしょうか」とお願いしているのです。

本末転倒。都民のことなんか知ったことではないわけです。

一度でも役所からなにかの仕事を依頼されたことがある個人や法人なら、はっと思い当たることはありませんか。

どんなに上の方の官僚が有能でも、なにか問題が起こったら末端に押しつけて制度の立て付けを変える。日本の役所あるあるです。

いまはこの事件について法治国家の危機として、少なからぬ人が悲鳴を上げているのに、役人が考えることなどこの程度です。地方から、条例から変えよう。そういう声は多々ありますが、かつて淫行条例制定で最後までためらったのは東京都と長野県ですから、「またか」と昏い気持ちになるしかありません。(2023年4月2日追記:これに先立ち、2023年1月16日、厚生労働省の有識者会議で、Colabo を事実上助成対象から外す重要な提言が行われていました。詳細はこちらの4をお読みください。)

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2.支援事業と補助事業の違いと委託対象

ものすごく乱暴な説明をします。支援事業は助成金を出します。補助事業は補助金を出します。補助事業に委託業務はありません。補助金は個人事業主にも出ます。

新型コロナウィルス流行下に、助成金や補助金という言葉が飛び交いました。自営業者ならピンとくるでしょう。被雇用者でも「社長が言っていたなあ」と思い出しませんか。大きい企業だと分からないかもしれません。

助成金には返済義務はもちろんありません。原則として成果は問われません。(繰り返しますがものすごく乱暴な説明なので御了承を。)補助金は助成金同様申請式ですが、東京都の場合「TOKYO 補助金サーチ 見える化ボード」を使い、自分で探します(2022年度の補助金については https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/zaisei/hojokin/4hojokin.html を御参照ください。2023年3月22日閲覧)。

一緒じゃないかと思われそうですね。しかし、「東京都若年被害女性等補助事業」となると、個人事業主も含め、営利目的の申請も可能になる確率が高いのです。詳細がまだ発表になっていませんからまだ断言はできませんが、ここまででお分かりでしょう。

極論ですが

風俗店経営者だって補助金申請はできる

のであります。まして任意団体である SWASH は当然できる。まだ可能性の話ですが、だからこそ、いま皆さんに緊急でお伝えしたいのです。

私の懸念が杞憂に終わることを願ってやみません。

なお、大事なことなのでもう一度言いますが、これはものすごく乱暴な説明です。国や都道府県、市区町村の助成金には、営利目的のものに出すこともあります。この説明は「東京都若年被害女性等補助事業」に限って言えることなのでお間違いのないように。

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3.一般社団法人の要件と受託の関係

一般社団法人は2人で作れるし、法人だと受託に有利、補助金も取りやすい。

「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(平一八・四十八、改正令四・一一・一)は非常に長文で細かい(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000048, 2023年3月22日閲覧)ので、こちらでは法務省の「一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji153.html, 2022年3月22日閲覧)を御覧ください。

ざっと目を通して分かることですが、一般社団法人には代表理事を不特定多数に公開する義務はありません。先のメール・マガジンで若草プロジェクトと Spring について「社会通念上」「不誠実」と表現しました。それは法に抵触する行為ではないからです。

近代社会とは法律に触れなければ何をしてもいいコミュニティではありません。一定の倫理規範が構成員に共有されていることを前提に、法制化はなされます。「なぜ人を殺してはいけないの?」と説明できないと話題になった時期がありました。それは「人を殺してはいけない」という倫理規範が無効になったかのような残虐な犯罪が頻発したからです。

これは「売るか売らないかはワタシが決める」なる言辞が、買春という言葉が定着してきた時期に出てきたことにも繋がります。買春批判に対する反動が「性の自己決定権」と「売買春合法化」です。

すこし勇み足な話をしてしまいましたので、一般社団法人に戻します。俗に NPO 法人と呼ばれますが、最低でも社員が2名(初版では「常勤社員」と書きましたが、誤りだと御指摘をいただきました。ここにお詫びと共に訂正いたします)必要です。その人件費は法人が支払わなくてはなりません。社員を雇用するのに必要な諸経費も含みます。アルバイトやパート・タイマーも雇えますし、弁護士費用も講演謝礼も払えます。

これは社団法人の名を借りて脱税する団体が増えた結果、対策として打たれた法改正です。2023年にインボイス制度導入が話題になっていますが、同時に個人事業主の見直しが進んでいます。事業収入が給与収入を下回る場合、事業ではなく雑所得として見なし、青色申告を認めない指針が2022年度確定申告から始まっています。これも脱税目的でペーパー・カンパニーを作る例が多発したことが理由なのですが、売れない著述業、美術家、マンガ家、俳優にはいい迷惑でしょう。

改めて倫理規範の話です。規範が無効になったかのように思われる事件が起きたとき、一番割を喰うのは規範を維持している人間である。それがグローバリゼーションの帰結としての21世紀なのかもしれません。だからこそ、若年女性支援事業を受託、ないし補助金を受ける法人や個人事業主には、公人として倫理規範の保持を求めたいのです。さもないと、一般社団法人、一般財団法人制度が廃止され、すべてが競争原理に晒される、野蛮な喰い合いの社会が到来しかねません。

次のメールマガジンから、今回も書いた倫理規範の逸脱と学者の共犯関係について、回を重ねて考察していきます。

2023年3月22日 初版

2023年4月2日 第二版

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